繁昌亭のすぐ向かいにある小さなペンションは開業して今年で丸々15年になる。
その頃は、シティホテルやビジネスホテルが全盛の頃で、
大阪市内にペンションなどなかったし、
「京都と違うんやから、観光客が大阪なんかに泊まれへんて」と、
大阪人からも、たびたび指摘を受けた。
事実、観光客向けの小さくて個性的な宿そのものが皆無に等しかった。
仕事でしか宿泊施設が利用されない街、それが大阪だった。
長屋を改修した宿、下宿部屋を改築した宿、寺の離れを利用した宿など、
「小さな宿の博物館」みたいな京都とは、当時月とすっぽんほどの違いがあった。
しかし、ここ数年来、国の観光政策も開明的になり外国からの個人旅客が増加し、
ニッポンで唯一つの24時間空港を持つ大阪にも、国内外を問わず観光客がずいぶん増えた。
その証拠には、ワンルームマンションを転用したものや、
下町アパートをホテルとネーミングしただけものまで、雑多で多様な宿が大阪にも出現し、
どれもそれなりに好調のようで、当然のことながら外国人旅行者にも、
ニッポンが2度目、3度目という方が多く、この方たちのニーズはニッポンが好きな分、濃く深〜い。
曰く、「美味しい沢庵が食べたい」、「味噌汁のバリエーションは何種類ぐらいあるのか」、
「気軽に安く見れる舞台はないか」、「各地の銭湯巡りをしているが大阪は?」等々、
挙げていけばキリがないくらい、そのニーズは多岐にわたる。
「気軽に安く見れる舞台は?」というニーズの中には落語も入っている。
曜日には「必ず定席で英語公演しています」との案内に、お目にかかりたい。
文楽や歌舞伎だけがニッポンの至芸か、というものでもなかろう。
せっかくの繁昌亭、近畿一円の大ホテルなどと協働して「上方の至芸」を、
外国からのリピーターにも披露してほしいものだ。
一回こっきりのイベントではなく継承されてきた市井の文化、大阪のユーモアを
ここ繁昌亭から毎月一回は、全世界に向けて発信してほしいものだ。

昨秋に続きドイツからやってきたリピーター宿泊客「英語でいいから落語を楽しみたい」と、ドイツ訛りの英語で。


